秘密
楽しそうにお父さんと二人でゲームを始めるまりあちゃん。
久し振りに会ったんだもんね。
まりあちゃん、凄く嬉しそう。
二人の邪魔しちゃ悪いから、残り少ない面会時間の間だけでもせめて二人きりにしてあげよう。
私はそっとベッドから出ると、トイレにでも行くつもりで、さりげなく病室を出た。
消灯時間までは談話室を利用できるから、そこで時間を潰そう。
談話室へ入ると、休憩中なのか、岡崎先生がコーヒーを飲みながら、他の若い男性の医師とテーブルに着いて談笑していて、私は自然とそちらの方へと足を運ばせた。
「岡崎先生、休憩中ですか?」
「あ。奏ちゃん、うん。ちょっと生き抜き」
「あの…さっきはすみませ…」
「おっ♪岡崎。誰?このカワイ子ちゃん」
もう一人の医師に遮られてしまった。
カワイ子ちゃんって……
実際に言ってる人…
初めて見た…
「また…お前は…、いい加減にしろ。全く…、彼女は外科に入院してる患者さんだよ」
「え?マジ?いーなーお前。俺なんか今内科勤務だから、ジーさんとバーさんばっかだぜ?チョー羨まっ!お前ばっかズリー!」
……なんか。
チャラそうな医師だな……
そのチャラい医師は椅子から立ち上がると。
「はじめまして。若き未来の有能な精神科医。小谷徹27才です。よろしく」
右手を私に差し出した。
「はあ…、あの…私、奥村、奏です…」
「奏ちゃんかー、名前も可愛いね♪」
小谷先生は半ば無理矢理私の手を取り、ブンブンと振り回す。
「座りなよ、センセーがなんか奢ってあげる、コーヒー?いや、寝る前にカフェインはダメだな…、奏ちゃんはうーん。ミルクティーって感じかな?ちょっと待ってて、買ってくるから」
そう言って私を座らせると、その場から立ち去ってしまった。
私は何が起こったのかと、暫く放心してしまった。
「ごめんね、奏ちゃん、あいつ悪い奴じゃないんだけど、ちょっと…チャラくて…」
「そう、みたい、ですね」
さすがに否定する事は出来なくて、私は岡崎先生にそう言った。
「ま。気にしないで軽く流してやって?」
「ははは……」
軽く流すなんて私に出来るんだろうか?
「で?どうしたの?僕に用事かな?」
「え?あっ、用事って言うか…」
私はまりあちゃんのお父さんが来てるから、邪魔しないようにと病室を出てきたのだと、簡単に説明した。
「そっか、まりあちゃん喜んでたでしょ?」
「はい。とっても、あの…小谷先生も研修医なんですか?」
「うん。あいつとは大学も同じ、腐れ縁ってやつ」
「腐れってなんだよ、人が居ない間に奏ちゃんに変な事吹き込むなよ」
紙コップを手に戻ってきた小谷先生は、私の向かい側の席に着いた。