秘密




「………いいよ」

「おいっ、小谷」

「患者の要望に応えるのも医師の努め……だろ?岡崎」

「でも…、僕達はまだ研修医だ…、医師の許可無しに、勝手にそんな事出来る訳ないだろ?」

「そっ…、それじゃ、私とお友達になって下さい」

「は?」

「医師としてではなくて、お友達として私に催眠療法試してみて下さい」


私は小谷先生の先生の顔をじっと見つめて、小谷先生も同じように私の顔を見つめていた。


「……成功するかどうかはわからないよ?それでもいい?」

「はい。構いません。今の状況より少しでも可能性があるのなら、私はやってみたいです」

「……奏ちゃん…」

「すみません。岡崎先生、私やっぱりどうしても思い出したいんです……」


……佐野君の事を。


何故こんなにも佐野君の事にこだわるのか、自分でもわからない。


けど……


どうしても思い出したい。


「お願いします。小谷先生」

「……わかった」

「ホントですか?ありがとうございますっ」

「小谷。お前、安請け合いするなよ、奏ちゃんも少し落ち着いて……」

「私。落ち着いてます」

「うん。奏ちゃんはこれでもかって位落ち着いてるよ、岡崎。お前は専攻外だからわからないだろうけど、今の奏ちゃんにはそれがきっと必要なんだよ。さっきまでの顔付きとは全然違うだろ?奏ちゃん」

「……でも、だからって…」

「なあに。オペをする訳じゃないし、外的治療をする訳でもない。ちょっと奏ちゃんの心と会話してみるだけだよ、心配いらない」

「………小谷」


心配気な表情を私に向ける岡崎先生には申し訳ないけど、微かだけれども希望が見えてきた。


知らない事が多すぎる。
わからない事が多すぎる。


全部思い出したい。


佐野君の事。
全部思い出したい。



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