秘密
◆◆◆






ばあちゃんちから一旦アパートに戻り、酸っぱい匂いを放つTシャツを洗濯機に放り込んでシャワーを浴びる。


着替えてアパートを出る頃には既に18時前。


今日は奏の所に行けそうに無いな……


毎日通うのは奏にも気を使わせてしまっているようで、実家にも帰らないとならないし、まには遠慮して今日は行くのを控えよう。


そう決めてアパートを後にし、実家へと向かってバイクを走らせた。


夕方になったとは言え、真夏の陽射しはまだ衰えてなくて、シャワーを浴びたばかりなのに再び汗だくで。


家にたどり着く頃には再び酸っぱくなってしまった俺。


俺もヨースケみたいに早く車の免許がほしい……


と、切に思った。


バイクは好きだけど、冬の寒さと夏の暑さにはさすがの俺でも参ってしまう。


18になったらソッコー免許取ってやる。


ガレージにバイクを停めると兄貴のバイクもそこにあり、父さんの車はまだ仕事から帰っていないのか、そこには無かった。


「ただいまー」


玄関を開けてそう言うと、母さんがスリッパを鳴らし、小走りしながら、満面の笑みで迎えてくれた。


「お帰り。茜」

「うん。ただいま」

「奏ちゃんは?」

「連れて来てないよ」

「……なーんだ。来てないのか、残念」


さっきの笑顔が一瞬にしてかき消され、声のトーンまでダウンしてまった我が母親。


……まあ。
別にいいけどね……


うちに上がり取り合えずキッチンへと向かう。


冷蔵庫を開けてペットボトルのミネラルウォーターを一気飲み。


「兄貴は?」

「二階で寝てる、茜。コレ静に持っていって?」


帰ってきた途端に俺をこき使おうとする母さんは、兄貴が言うように、ホントに寂しがっていたんだろうか?


ただ奏に会いたかっただけに違いない。


母さんが俺によこしたトレイを見てみると、お粥と水と錠剤だった。


「……何?兄貴具合悪いの?」

「昨夜から少しね、ただの風邪よ。じゃ、よろしくね」


母さんからトレイを受け取り二階へと上がる。


馬鹿は風邪引かないって言うけど、兄貴は馬鹿じゃ無かったのか?


いや、夏風邪は馬鹿が引くって言うから、やっぱり兄貴は馬鹿なんだ。


なんて、妙に納得しつつ兄貴の部屋を足でノックした。


「兄貴。入るぞ?」

「茜?入れよ」


ドアの向こう側から声がして、部屋に入ると……



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