秘密
「………何?…コレ…」
俺は驚きその場に立ち尽くす。
「閉めろよ茜。エアコン点けてんだから」
兄貴の言葉を無視して俺は続けた。
「…この部屋…どうしたの?」
驚くのも無理はない。
だって兄貴の部屋が……
「あー…、全部売った」
「売った…?」
あんなに大量に部屋を埋め尽くしていた兄貴のコレクションが、綺麗さっぱり……
全て無くなってしまっていた。
「何で…?」
「何でって、もう要らないから。早く閉めろ、部屋が温もる」
「あ…、うん」
言われてドアを閉めて中に入るけど、違和感たっぷりで、どうも居心地が悪い。
トレイをベット脇のテーブルに乗せると、ベットを背に胡座をかいて部屋を見渡す。
あんなに狭く感じていた兄貴の部屋が広々としていた。
「お♪卵粥♪うまそー♪」
ベットから起き上がり、トレイを膝の上に置く兄貴に聞いてみた。
「何で売ったりしたの?」
「フー、フー…あちっ!…さっきも言っただろ?もう要らないって、フーフーフー…」
「要らないって…何で?」
「フーフー、何で何でって、お前しつこいな、言った通りだ」
マニアの間では、かなり貴重な劇レアグッズだって少なくはなかった筈。
それを綺麗さっぱり売り払うなんて……
あの兄貴が?
……信じられん。
「金が必要だったの?」
「まぁ…、そんなとこだ」
「ふーん……」
コレだけのグッズを全部売るとなると、相当な金額になるに違いない。
今の兄貴に一体何にそんな金が必要だったか?
職場も自宅通いだし、彼女が居るわけでも無さそうだし……
でもな、俺の知らないうちに恋人が出来ていたって可笑しくはないよな。
兄貴もやっと二次元から卒業したって事か?
それはそれで良い事なんだろうけど……
あの兄貴が……ねぇ…?
「お前、もう部屋から出ろよ。風邪移るぞ?」
「あ……、うん…て、なんか話があったんじゃないの?」
「話があるのは父さんだよ、もう直ぐ帰ってくるだろ?」
と兄貴が言ってる側から。
「ただいまー」
帰宅した父さんの声がした。