秘密
「ちょっ、父さん、何か勘違いしてないか?俺はアメリカへは…」
「行くって決めたんだろ?高田先生も喜んでたよ」
俺は行くなんて一言も……
何がどうなってるんだ?
「編入の手続きとか、必要な書類貰ってきた、そうと決まれば準備は早い方がいいだろ?」
「待ってよ、父さん。話が見えない、俺行くなんて言ってないよ?」
「え?静から聞いたぞ?茜がまたバスケやりたいって」
「は?」
「その為に、茜の留学の足しになるならって、静はコレクションを売り払って、費用の足しにしてくれって父さんにコレを…」
父さんはデスクの引き出しから取り出したのは、兄貴名義の預金通帳。
「そんな事しなくていいって断ったんだけど、茜の為に、自分も何かしたいからって」
兄貴の部屋が空になっていたのは俺の為?
でも俺は兄貴にそんな事言ったか…?
………あ…
あの花火大会の日だ。
確かに言った…
バスケがしたいって。
でもそれはただ言っただけで、何らかの形でバスケに携わっていければと思って出た言葉であって、深い意味なんかなくて……
兄貴がそれを俺がアメリカに行きたがってると、勘違いしたのか?
だとしたら俺はとんでもない事を口走ってしまった。
「父さん、ちょっとそれ貸してっ」
父さんから通帳を引ったくるようにして奪い、俺はバタバタと二階へと上がった。
「兄貴っ!これっ!」
ドアを開けるなり俺はそう言って、兄貴のベットに近付くと。
「あれ?父さんばらしたの?茜には秘密って言ったのに…」
「兄貴………、ごめん…俺…」
「あー…、いいんだよ。気にすんな」
「違う、そうじゃなくて…」
「お前がやっとやる気を出したんだ。兄貴としてはそれ位の事は当然だ、遠慮なんかするな」
「だから、違うんだ…」
「茜」
後ろから母さんの俺を呼ぶ声がして、振り向いて見ると。
「よっ!茜」
母さんの後ろに高田先生が立っていた。