秘密
通帳を閉じて机の引き出しにしまう。
俺のバスケがしたいって一言で、兄貴がここまでしてくれるなんて。
兄貴には申し訳ないけど、これを受け取る訳にはいかない。
明日……、兄貴に返そう。
それと、父さんや母さんや高田先生にも、もう一度ちゃんと話して、アメリカには行かない事を理解してもらおう。
こんなにまで周りを巻き込んで、今さら何言ってるって呆れらるかも知れないけど、今の俺にはそれしか思い付かない。
アメリカへは行かない。
奏の側に居る。
バスケは………
どんな形であれ、ボールに触れられれば、それでいいんだ……
『俺ね、二十歳までしか生きられないらしいんだ』
『残された時間はあと1年……』
『お前…、アキラの前でも同じ事言えるか?』
『……俺だって…、自分の足で全力で走りたい…、思いきり跳びたい…』
アキラ……、洋ちゃん…
ごめん。
−−コンコン。
不意にノックの音がして、罪悪感で押し潰れされそうになってた俺を現実に引き戻した。
「茜、入るぞ?」
兄貴が部屋に入ってきて、俺のベッドに腰を下ろした。
「兄貴……、あの通帳…」
「あ?ああ…、あれは俺からのセンベツみたいなモンだ、だから気にすんな」
「あんな大金受け取れないよ、それに、俺…」
「大した金額じゃないだろ?お前の夢が叶うんだ。またあの頃みたいな茜が見れるんなら、俺は何だってしてやるよ」
「………兄貴…」
「お前は自分の力を信じて、アメリカで頑張ってこい」
笑ってそう言う兄貴。
こんなにまで俺は皆から……
大切にされてる。
期待されてる。
愛されてる。
……なのに…
俺はそれを裏切ろうとしている……
どうしたらいいんだ?
出来る事なら、俺だってそうしたい。
………出来る……事なら?
俺は……
心の奥底では、アメリカに行きたいと思ってるのか…?