貴方の恋人になりたいです
たいして走ってもいないのに、はぁはぁと息を切らしていた。
「朔、いるん?」
襖ごしに彼の声が聞こえた。
「いないっ!いないいないっ!」
そう叫ぶと、クックッと笑い声が聞こえた。
「ほんまアホやな、いないなんているっていっとるようなもんやないか」
またクックッと彼は笑った。
「うるさい!早く稽古でもなんでも行きなさいよっ!」
「そう言わんといて、ここ開けや」
「いーやっ!」
襖を無理矢理こじ開けようとする彼とは対照的に、私はそれをさせまいと、一生懸命に襖をおさえた。
「プレゼント、どうやった?気にいったん?」
唐突に彼がそう言った。
まさかこのタイミングでそれを言われるとは思わなかった。
必然的に腕の力が抜け、彼に襖を開けられてしまった。