貴方の恋人になりたいです



ムカつくムカつくムカつく。


なによ、誕生日忘れたって。


今年のアイツの誕生日プレゼントなんてやらないんだから!


腹がたって仕方ない。


祖父の部屋へ行き、襖越しに呼びかける。


「お祖父様、朔良です。」


すると中から入りなさいと、声がした。


「失礼します。」


中に入ると、お祖父様は書道の最中だったらしく、紙が散らばっていた。


「ずいぶん早かったな、利緒にはいつでもいいと言っておいたのに。」


そんなこと言ってなかったじゃない。


ほんとにムカつくやつ。


「今日は17歳の誕生日だろう。」


そう言って、棚から薄くて長い箱を取り、目の前に置かれた。


「これは?」


首を傾げると、お祖父様は目元をくしゃっとさせて微笑み、箱を開けた。


中には、朱色の綺麗な着物が入っていた。


「綺麗…」


思わずそう呟いていた。


「この着物は舞華が17のときに着ていた振袖なんだ。」


「母様が?」


舞華とは私の母の名前だ。


「朔良も17になったんだ、ひとつくらいよそ行き用の着物があってもいいだろうと、お祖母様と話していたんだ。」


と言って、もうひとつ箱を取り出した。





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