貴方の恋人になりたいです



中を開けると、振袖に合わせた淡い色の帯が入っていた。


「ありがとうございます、ずっと大切にします。」


心からその言葉が出た。


お祖父様もまた目元をくしゃっとさせて微笑んでくれた。


それを持って自分の部屋に戻ると、お気に入りの座椅子にドカッと座り、和菓子とお茶を頬張っているアイツがいた。


どうして?


なんでここにいるのよ。


「お、やっと帰ってきた。遅かったなぁ。」


と、あの胡散臭い笑顔を浮かべて言った。


「何が遅かったなよ、待っててなんて言ってなかったじゃない。それにいつでもいいって言わなかったわよね。」


責めるような口調で彼を睨みつけながら言った。


でも彼はくっくっと笑うだけでなんとも思ってないらしい。


「で、一樹はんはなんの用だったん?」


「あなたには関係ないでしょ。」


ぴしゃりとそう言い、貰った振袖を着物掛けにかけた。


「えらい綺麗な振袖やな。」


「誕生日プレゼントにお祖父様から頂いたの。母様が17歳のときに着ていたものなんですって。」


わざと誕生日プレゼントの部分を強調して言った。


彼はそれに気づいたのかわからないがまたくっくっと笑った。




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