戀愛物語
顔を覆っている手のせいで、どんな表情なのか全くわからない。
もう一度、名前を呼んだ。
名前を。

「じゅん…くん」

小さな反応だった。けれどはっきりとわかった。
ゆっくりと巡が顔を上げる。
微笑んではいなかった。先ほどとあまり変わらない表情だった。
でも、少しだけ…少しだけ、嬉しそうな。
そんな感覚がした。

「私、ここにいた方が…いいの?」

「どうしてそう思う」

感じたことを聞いただけだったのだが、まさかそんなに早く返答されるとは思ってなかった。
だからしどろもどろになってしまう。
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