君が僕の名を呼ぶから
夕暮れになり、少し涼しい風が辺りに吹いている。
僕は、とても心地よいその風に包まれながら、真希のことを想っていた。
「翼くん。」
体育館の裏には、聞いていたとおり、1人の女の子がいた。
「来てくれたんだね……ありがとう。」
「いえ……。」
彼女は確かに綺麗だったが、僕の心を揺さぶるものではなかった。
「あの……バスケの試合とか見てて、すごくかっこよくて……一目惚れなんだけど、私と付き合ってください!」
……恋する女の子の表情は、こんなに美しいものなのか。
僕はそう思った。
……一度でも、僕に真希はこんな表情をしてくれたことがあるかな?
「……あの、気持ちは嬉しいんですけど、僕……好きな子がいるんです。」
僕はゆっくりそう言った。