雨音の記憶
「胎児の時の記憶…か」
窓の外の小雨は、一向に止む気配も無く、かと言って、激しくなる様子も見られず、まったりとした雰囲気で自分が包まれて行く様な感覚に襲われ、同時に眠気に襲われて居る事に気が付いた。

「おっと…夏実が言う事も、まんざら嘘では無いんだな」

雨音で眠気を感じた自分の事に気が付いて、夏実の顔が脳裏にちらついた。

その彼女は、自分の頭の中で、無邪気に微笑んでいる。そして、俊介は本気で思った。さっき言った写真だけは、是が非でもネガごと回収して何とかして処分してしまわなくてはと。しかし、眠気は全く収まる事は無く、むしろ強くなって行った。

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