【B】君の魔法


「あの後、
 貴女は……兄をふった。
 その夜……、私、見てたの。
 貴女が会長と二人、
 夜の街を歩いてたのを。

 兄が居ながら最低だと思った。

 だから……軽蔑したのよ。

 そんな人と、仕事したくないって。

 でも……それも、
 誤解だったみたいだから。

 言葉を交わすって
 本当に大切よね。

 改めまして、能美華南よ。
 華南って呼んでちょうだい」


祐太の妹は、
自己紹介を終えると、
ゆっくりと手を差し出した。


「私も……
 尊子って
 呼んで貰って構わないわ」
 

握手なんて……
交わすことなんてない。


馬鹿げてるって
思ってたのに
自然と握り交わした手の
温もりが、
こんなにも力強く感じるなんて
思ってもなかった。



あの時の誤解が、
縺れ合ってた糸が
解けた今なら……
やり直せるのかしら?



祐太と……。
< 210 / 339 >

この作品をシェア

pagetop