【B】君の魔法
クリスタルエレベーターが開いて、
いつもの日常が始まる。
会長室のデスクには
今日も武流さんが居て
その隣には、
柳さんがいる。
いつもは一人きりの
仕事場も、今は
仕事を割り振ってくれる
華南が居てくれる。
朝、始業開始と同時に
鳴り響く電話応対をして
スケジュールを埋め込む。
今日の予定で使う
資料を、
的確にまとめて整頓して
鞄の中にファイリング。
いつものように、
会長が外出しやすいように
準備を整えて
いつものように
自分の仕事をこなしていく。
一日の仕事を
今日も無事に終えた
退社前、柳さんが
嬉しそうに報告するように
言葉を紡いだ。
「心さん、華南さん。
私、もうすぐ寿退社します。
ここに居るの」
愛しそうにお腹に手を当てて
得意げに呟く。
「武流との赤ちゃんが……」
チクリと
その言葉に
心が張り裂けそうになる。
立っていられないほどに
動揺した私を
薄ら笑いながら
柳さんは退室していく。