【B】君の魔法







朝……
目が覚めたときに、
私の枕元に、
置かれた小さな箱。



シャワーを浴びて
姿を見せた
祐太が髪を
ガシガシと乾かしながら
ベッドへと近づいてくる。



「尊子、結婚しないか?。

 本当は……
 
 あの日、
 渡すつもりだったんだ」




あの日が意味さすものは……
私と祐太が別れた
一度目の別れ。



ボックスをゆっくりと開くと
姿を覗かせる
小さなダイヤの指輪。




祐太の手が、
私の手をそっと掴んで
ボックスの中の指輪を
薬指にはめようとする。







その……祐太の行為に
思わず、手を引っ込める。



「……尊子……。

 それが、お前の答えか?

 お前が今も、
 会長が好きならそれでもいい。
 
 けど……アイツはもう、
 結婚して
 ガキが出来るだろ。

 アイツを忘れたいなら、
 時間かかってでも
 俺が忘れさせてやる。


 尊子を惨めにさせたりしねぇから……」




祐太の声が
突き刺さってくるけれど、
その言葉に、頷くことなんて
今の私には出来なかった。
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