王子様の溺愛カメラマン
先輩の言葉に静かなホールに緊張が走るのがわかった。





全員が息を飲んで、スポットライトに照らされた私たちを見つめていた。





まさか…こんな風になるなんて。


あまりの事態に私の心拍数はドキドキと速まり手は小刻みに震えていた。



目の前には完璧な演奏を終えたあの冬島先輩。


ここにいる誰もが、まさか断るなんて思ってないだろう。


冬島先輩は頭を下げて右手を出したままだ。


「………」





私は震える手で冬島先輩のその手を掴んだ。








「……ごめんなさい」




先輩の右手に敬意をこめて、両手でしっかりと握りしめながら。




「でも…演奏はすごく感動しました。本当にありがとうございます」



「………」





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