王子様の溺愛カメラマン
しかしモデル探しは俺の知らないところで話が進んでいたらしい。





バイトから帰宅後、玄関で靴をぬぐ俺の前にオカンがやって来た。


「日向、これエマちゃんの番号よ」


「…は?」


「モデルやる気あるみたいだから電話してみなよ」


「………」


俺が顔をあげるとオカンは例のコンテストの案内を持っていた。


どうやら俺が家に置きっぱにしてたやつを見つけたらしい。


その余白には携帯の番号らしきものが赤ペンで書かれてあった。


さすがうちのパワフル・オカン。


良い意味でも悪い意味でも行動が早い。



「ってかエマって誰?」


「んもぅ、王子さんとこのエマちゃんじゃない!昔キャンプしたでしょ?」


「ん…?」


俺は遠い記憶を手繰り寄せてみる。


確かに…毎年家族でキャンプは行ってて。


そこに俺と同じ歳の女の子がいたような、いなかったような…





「あんた最近ずっとキャンプ来てないから知らないだろうけど、エマちゃんすっごく綺麗になったのよ」


「………」


「他にモデルさんいるならあれだけど…とにかくお母さんもう頼んじゃったから電話してみてね」


オカンはそこまで言うと玄関の俺に紙を押し付けた。


そしてオカンは台所に消えていった。


俺はその紙を制服に突っ込むとそのまま部屋に向かった。


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