仮病に口止め料
「だらい言うなよー最悪だよ。なんか精神的にきちーよ」
「そんなら俺とか付き合ったことねぇよ、ウツ入るからきちぃよ」
「確かにそれくるな、まあ高一だから大丈夫だって」
「なーんだよ、人事なら適当だな」
下の階ではしゃぐ生徒の笑い声だけが階段を上ってきて、そのまま二人だけの世界に反響する。
薄い水色のシャツから入り込む空気が皮膚を撫でて逃げていった。
なんて具合に、ああだこうだ状況を故意に茶化すのは終わりだ。とりあえずキスについて謝ろう。
既に察しが良い人間にはバレバレだろうが、俺はこのお姫様に絶対嫌われたくないのだ。
そう、彼女の(アルバイト先や家族や、学校や地元という狭い生活圏という)世界で、
一番愛しい存在が洋平君でなければ、一方的に惚れまくっているなんて同級生の手前格好悪いし、恋心が困るからだ。