仮病に口止め料
彼女の頼りない声は、まるでプールサイドを調子に乗って走りギャグな勢いでずっこけ、急に元気がなくなる子供みたいだった。
もう風邪だった。
よくよく考えたら、今日は朝からずっと鼻声だった。
それが恋人にしか使わない(媚びるような)甘えた口調に思え、だから俺は一人ドキドキしていたのかもしれない。
情けないというかなんというか、実に思春期臭い。
「風邪だろ?」
「違うってば」
キスをする前みたいに一定の距離を保ち見つめ合う愛に満ちた二人の姿は、デジタルサイネージでもなく写真でもなく絵画でもなく、
写メがぴったりのチープさだ。