仮病に口止め料
「あっ、おはよー」
振り向いた彼女は十六歳、つまり計算上貴重な百六十二ヶ月の内すでに六ヶ月は俺のものになっている恋人だ。
「お待たせ、なんか、今日暑い?」
喫茶店に入ったことを知らせる鐘に似た声は、簡単に俺の唇を持ち上げてしまう。
好きだった。半年後も絶対この子を好きでいる自信があった。
いいや、ここは夢見る乙女どものピュアさに付け込むために、永遠と謡っておこう。
訂正する、『俺は永久にこの子を好きでいる自信があった』、これで完璧な素敵紳士だ。
顔に惚れた訳ではないと言うことは、人生で一回もグラビア雑誌を見たことがないと主張することに等しい。
初対面に近い場合、人が上っ面の関係から深い仲になりたいと思うきっかけづくりは、
顔というか全体の雰囲気がかなり影響していると俺は考えている。
だから何だと聞かれたら、とくに意味がないため何も答えを持ち合わせていないのだけれど、
外見に惚れた疑いに対する弁解だとは返せるというお粗末な結論であるだけだから、誰も食いついてはならない。