たとえばセカイが沈むとき
「じゃあ日付変更線を、自転と同じ方向へ回ることで、未来へ行ったんですか?」
「いいえ。未来へ行くには、光も時をも置き去りにする速度で宇宙を飛びました。いかに物体にぶつからないようにするか苦心しましたよ、なんせ宇宙塵に触れただけでも大変危険ですから」
「ち、ちょっと待って下さい。え、未来と過去へは行き方が違うんですか?」
てっきり同じ理論で組み立てていると思っていたが、そうではなかったらしい。
聞き咎めた僕に、男は面倒くさそうに眉をしかめる。『あ』という文字は何故『あ』と読むのか、という事を教えてとねだられたかのように。
「そりゃそうですよ。過去へ行く方法はえらくエネルギーを使いますから。未来と同じ方法では、1日だって戻れやしません」
そしてズブの素人である僕に、機械の仔細を説明するのは無理だと見切りをつけたのか、あっさりと話を切り上げてしまった。