たとえばセカイが沈むとき


 まるで足掻く僕を嘲笑うかのように、チサトのいない世界が僕にすり寄ってくるのが忌々しい。

 僕はただ、チサトと共に生きたいだけだ。他には何もいらない。チサトさえいてくれたら。

 それだけの望みを、世界はどうして拒むのか。

「そんな未来は、いらない」

 チサトのいない未来など、僕にとって価値はない。

 僕は息を継ぐ間もなく、タイムマシンに乗り込んだ。フライトの日付設定は、ここからの昨日。事故の日の、前日。

 今度こそ、僕はチサトを助ける──必ず。固く誓い、発進ボタンを押す。

 ぶおん、と加速するタイムマシン。ほんの刹那で前日に到着した僕は、チサトがいる筈のアパートに向かった。


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