もう会えない君。


「凛、帰ろ?」
いつものように隼が私の席まで来てくれた。


隣に居る悠は…少し忙しそうだった。


理由は鈴奈さんが来ているから。
今日も諦めずに悠に会いに来たようだ。


一途に想い続けている鈴奈さんを尊敬してしまう。
こんなにも愛されている悠は幸せ者だ。


鈴奈さんは悠に同じ事を言う。


「悠くん、夏休み始まっちゃうね」

「…だな」

「一緒に思い出作ろうよ!」

「………」

「悠くん?」

「何」

「悠くんの彼女にして♡」

「無理」


語尾に可愛らしくハートを付けるようにして言う彼女に悠は即答する。
すると彼女は頬を膨らまして可愛らしく怒った。
それでも悠の気持ちは変わらないようで…鈴奈さんは今日も肩を落として教室を出て行った。


夏休み前、最後の登校だからこそ会いたかったんだろうな。
私も鈴奈さんと同じ立場だったら、しつこいくらい会いに行くだろうし…。


さすがに堂々と告白までは無理だけど。
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