もう会えない君。
部屋を出て、303号室の前で立ち止まる私は乱れた息を整えて五月蝿い心臓を無視するようにインターホンを強く押した。
出て来てくれるかも分からない。
もしかしたら昨日の私みたいに出て来てくれないかもしれない。
だけど…
それでも…
私は強く祈った。
…――――私の願いは――――隼に届いた。
インターホンを押して数分が経過しても私はその場を動こうとはしなかった。
だから会えたのかもしれない。
だから隼が出て来てくれた時、待っててよかったって思えたんだと思う。
「隼……」
「……凛」
「今、ちょっといい?」
「……ん」
「昨日はごめ…――――」
「いや、俺が悪かった」
私の言葉を遮った隼からは予想外の言葉が飛んできた。
なぜ?
隼が謝る理由なんてないでしょ?
不思議そうに隼を見つめると私の頬に隼の暖かな手が当たった。