もう会えない君。


ファミレスと連発してみたけど悠はファミレスに行く事を酷く拒んだ。
理由は分からないけど理由を聞いてはいけない気がしたから敢えて聞かなかった。


ファミレスの方が近いのに繁華街に行こうと言い出した悠。
どちらかと言えば、映画の方が近いかもしれないと思った。
だけど今更、行きたくないと言っても悠は言葉を遮るだろうから黙ってた。


「そういえば…」
突然、何かを思い出したかのように携帯を手に取る悠。
何を入力してるのかは分からないけど文字を打つ音が聞こえる。


「んー…違う」
携帯と睨めっこを始める悠の隣を歩く私。
独り言を呟く悠に声を掛けていいのかも分からないからipodで音楽を聴こうと思ったんだけど…――――「あった」という悠の声にイヤホンを装着するのを中断させた。


そして悠の視線が携帯から私へと向けられる。
自然と目が合った私は首を傾げて悠を見つめた。


「繁華街じゃなくて駅前行こう!」
…途中まで向かっていたけど中断して反対方向の駅へと向かう事になった私達は足先を変えた。


なぜ、悠はファミレスを拒んだんだろう?
なぜ、悠は私をファミレスから遠ざけようとするのだろう?
駅前に向かう理由は分からなくもないのだけれどファミレスに行かない理由が分からない。


いつも勉強場所にしてたはずのファミレスを今日に限っては拒む悠。
でも、理由を聞く事が出来ないのは分かってたからだと思う。
ファミレスに行ってはいけない“理由”を私は知っていたからだと思う。


気付いてるのに気付いていないフリをしていたからなんだと思う。
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