もう会えない君。


急いで部屋を出ると隣の扉が開き、中から隼…―――ではない別な人が気怠そうに出てきた。


隼はもう行ったのかな?
そんな事を考えながら私は部屋の鍵を閉め、エレベーターへと向かった。


エレベーターは一階に止まっていたらしく、来るのに少し時間が掛かった。


待っていると背後に人の気配を感じた。
だけど振り返る勇気すらない私はじっとエレベーターが来るのを待った。


…あ、来た。
エレベーターが軽快な音を立てて開く。


乗り込もうとした時、後ろに立っていた人が私を追い越した。


私は少し遅れてエレベーターの中に入った。


室内には沈黙が流れていて一緒に乗っている男の子のイヤホンから漏れる音だけが虚しくこだました。


一階に着き、私は男の子より先に降りて学校へと急いだ。


ポケットの中からipodを取り出して、いつものようにお気に入りの曲を聴いた。


片想いがテーマの曲。
今、話題のアーティストが歌う曲だ。


私はそれをリピートしながら学校へと向かった。
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