もう会えない君。


病院に着いて、隼はすぐ集中治療室に運ばれた。


私と悠は向かい側のソファに腰を下ろした。
隼の無事を祈りながら…。


お願い。
私から隼を奪わないで……。


神様、隼を助けて下さい。


もしも…
たった一つだけ願い事が叶うなら…。


私は迷わずに願うよ。
隼が明日を迎えられますように、と。


もしも…
たった一つだけ願いが叶うなら…。


私は私に来る明日を隼に捧げるよ。


助かるよね?
隼は…助かるんだよね?


私はずっと祈ってた。
隼が集中治療室から出てくるまで、ずっと。


時間だけが刻々と過ぎてゆく中で私の啜り泣く声だけが静寂仕切った廊下中にこだました。


この祈りが…
私の祈りが…
神様に届きますように。


そう願っては、祈り、願っては、祈り…。


気付けば、“手術中”のランプは消え、集中治療室から一人の医師が出てきた。
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