もう会えない君。


「凛っ!」
人波を掻き分けて来てくれたのは悠だった。
悠の手にはコンビニの袋が掲げられていた。


「隼が…っ…隼が……ッ」

「これで出血止めろ!」
そう言って悠は私にガーゼを差し出した。


頭から出血している事は確か。
私は頭全体にガーゼを巻いた。


しばらくして救急車が到着し、私と悠も一緒に病院へと向かった。


血まみれのままの隼と私。
悠は私に自分の着ている上着を羽織らせてくれた。


隼の手を握った。
…さっきまで私の頭を撫でてくれた隼の手。
優しい温もりでいっぱいだった隼の手。


…なのに。
どうして?
なんで、こんなに冷たいの?


私は何度も擦って温めようとした。
だけど隼の手は冷たくなる一方で…。


心拍数は低下してると救急隊員の一人である男性が病院に連絡をしている。


その声を聞くだけで…不安が募った。
祈るように隼の手を強く握り締める私を悠は病院に着くまでの間、ずっと優しく背中を擦ってくれてた。
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