もう会えない君。
「悠くん…」
消えてしまいそうなくらい小さな声で名前を呼んだ。
「ん?」
聞こえるか、聞こえないかくらいの声だったけど悠は気付いてくれた。
「私、帰る」
そう言って繋いでいた手を先に離したのは私の方。
なんだか面倒になってきた。
こういう空気は好きじゃない。
今すぐにでも走り去りたいとさえ思う。
私は悠の手を離して人波を掻き分けて昇降口へと向かった。
後ろから聞こえる声が五月蝿くてたまらない。
静かにしてほしいと思う。
もう聞きたくないと耳を塞ぎたくなった。
階段を駆け下りて昇降口で靴を履き替える。
ポケットの中からipodを取り出した。
「凛っ!」
イヤホンを付けようとした時、私の名前を呼ぶ声がした。
振り返ると慌てて追い掛けて来たのか、息を切らした…――――隼の姿があった。