何千年の夏休み



後から兄に聞いた私は生きる気力を失くした。私より重症な彼を放って私は病院を退院し、兄の頼みで承諾を得た親戚の所へ引き取られる事になった。母親はどこか遠くへ逃げたらしい。


それからこの村を後にし都会生活に……。



「………」


ミ──────ン


ミ──────ン


セミの鳴き声で再び私は我に返った。


カーテンを強く握りしめる。


此処へ来るたび9歳の時の日を思い出す。


本当は来たくない、だけど彼を放って置くわけにはいかないんだ。



一度目を瞑って眠ったままの彼を見ると、再び視線を窓へ移しカーテンを大きく開いた。眩しい太陽の陽が部屋へ降り注ぐ。一瞬にして部屋はとても明るくなった。



< 20 / 37 >

この作品をシェア

pagetop