ナルシー少年☆蛍斗くん


私、桃汰くんの彼女だった・・・

と言っても一方的にそういうことにしちゃっただけだけど。


それでも効果はあったみたいだ。

落胆(ラクタン)している様子の大木さん。

兄ちゃんはその様子を苦笑いで見ていた。


「帰るぞ。」

奴は私が隣に並ぶのを待ってそう言った。

触れそうなくらい近くにいるのに、蛍斗が私の手をとることはない。


当たり前だけど、

それが当たり前なんだけど・・・

さっきまで繋いでいたんだと思うと、手が寂しく感じる。


「じゃあ帰るね?」

寂しくなった手を振り挙げて兄ちゃんにバイバイした。


蛍斗が帰ると聞いて女の人は残念そうにしていた。

結局声をかけるタイミングを逃しちゃったようだ。



兄ちゃんは私と目が合ってニッコリとした。

「矢恵、ちょっと来て?」


なんだろ?
私はまた兄ちゃんに駆け寄った。


< 120 / 155 >

この作品をシェア

pagetop