心詩 ー モウイチド、モドレルノナラ ー
「ごめん……」
そう言って、縋るように私の身体にしがみつく手に身を任せる。
身長差はあまりない。
だから雅の小さな吐息が、私の耳にかかる。
やっぱり、変わんないな。
幼稚園の頃から、なんも変わってない。
それがなぜかたまらなく嬉しくて、私は微笑みながら、雅の背中に腕を回す。
すると、微かに雅が反応したのが分かった。
でもそのまま、あやすように囁く。
「…大丈夫…」
「――…うん」
「何処にもいかないよ…」
「うん………」
雅のぬくもりが心地よかった。
私達は産まれたときから一緒。
近所の子供は私達しかいなかったから。
だから兄弟以上に絆が深い。
辛いことがあったって、2人で支えあってきたんだ。
2人でいたから、乗り越えられた。
私は、雅の弱さをちゃんと知ってる。
雅も、私の弱さをちゃんと知ってる。
だから、何も言わなくても分かる。
こうやって触れ合うだけで、互いの気持ちが流れ込むように。
ごめん…雅。
私、自分のことしか考えてかなかった。
雅は離れられるのが、一番嫌いなのにね。