心詩 ー モウイチド、モドレルノナラ ー
ふっと、雅のぬくもりが遠ざかった。
「もう、大丈夫」
そう言って笑う雅は、いつものように、かっこよかった。
「…うん」
ちょっと名残惜しいけど、そろそろ教室に戻らないと。
どちらからともなく歩き出す。
「永遠」
「ん?」
「卒業、おめでとう」
「…うん、雅も。おめでとう」
笑顔でそう言うと、雅は本当に嬉しそうにはにかんだ。
「あ、そう言えばね」
「うん?」
「お母さんが今日、雅に家においでって」
「マジっ?」
「うん。お祝い一緒にしよっかって」
よっしゃ!と喜ぶ雅を見て、私まで嬉しくなる。
雅、お母さんの手料理好きだもんな。
「だからほら、ハウスキーパーさんに言っとかないと」
「そーだな。後で言っとく」
「うん。夕方には迎えいくよ」
「いーよ。隣じゃん?」
「どーせ寝てるでしょ」
ほっといたら起きないで、夜中に目覚まして腹減ったってうちに来るもんな。
「分かったよ。来て」
「うん」
そう言うと、雅は教室のドアをガラガラっと開けた。