【短編集】闇に潜む影
「これ、誰が掃除すると思ってんだよ!」
私は、右手を広げてそれの顔面を掴んだ。
私の手に収まるほど小さい顔を、そのまま前後に振り続ける。
「誰が掃除すると思ってんだって聞いてんだよ!?」
怒声が部屋中に響きわたる。
もしかすれば、近所の人に聞かれたかもしれない。
でも、気にしてなんかいられない。
今の私の心は、自由を求めていた。
幸せになれない理由を、消し去りたかった。
ここ数日、着替えていないままの汚れたシャツを着た、
目の前の「それ」は、苦しそうな息で、何かを呟く。
「・・あ・・さん」
「あ?聞こえない」
「おか・・・さん」
右手を勢いよく突き出して、「それ」の顔を放つ。
その勢いで、「それ」は頭を、後ろにあったテーブルの脚に頭を思い切りぶつけた。
「それ」は声にならない声を出して、顔を歪める。
ようやく心が、少しだけ晴れた。