君が笑える明日
「いってぇなぁ」
頬をさすりながら太一が呟く。
それを見てヒロが笑った。
「気の強い女だったなぁ。なに、付き合ってたの?」
「まさかぁ。付き合う気はないって事前から言ってあったのに、あっちから自滅してったんだよ」
はぁーあと深くため息。
深いことはわからないが、いつまでも煮え切らない太一の態度に我慢ならなかったのだろう。
太一の性格もわかるが、女が可哀相な気もする。
ヒロは呆れたように太一に言った。
「そろそろ真面目に彼女作ったらどうだ?」
「んー…もう長いこと真面目な恋愛してないからなぁ。今のが楽でいいよ」
「そうかよ」
「誰かさんみたいに、その人に片思いするために女遊びやめれるくらい好きな人作りたいっすねー」
からかうようにヒロを見つめて太一が言った。
ヒロは軽く睨んでそれを受け流した。
それからしばらく、二人は談笑していたが…
ガタンガタンッ
と隣の部屋から物音がして二人の会話は止まった。
隣の部屋は空室。
物音などするはずはないのだが…
二人は顔を見合わせた。