君が笑える明日
荷物の山を掘り進める。
まず最初に足が見えた。
その後に続く体までの距離は長く、埋まっている人物は長身だということに気付く。

「ここが顔!!!」

太一が叫んで、埋まっていた人物の顔にあたる部分にあった服を剥がす。

「…おお…」

思わず二人で驚いた。
自分たちよりも年上に見える若い男だった。
眩しそうに目を細め、男は起き上がって少し長めの髪をガシガシと掻き交ぜると伸びをした。
そして、

「…誰だか知らないけど助かったよ。ありがとう」

と誰もいない方向に声をかけたので二人は顔を見合わせた。
すると先程の少女がとことこと無言で近寄ってきて、男の顔にメガネをかけた。男はそれでやっと俺達に気付いたようで、改めて

「ああ、こっちだったか。メガネがないとどうもダメでね。助けてくれてありがとう。いちごが呼んで来てくれたのかな?」

いちご?二人が首をかしげると、男の横で先程の少女が頷いたので、それが少女の名前だとわかった。
いちごと呼ばれた少女はこちらを向くと、ヒロと壁を交互に指さした。

「ああ、隣の部屋の人なんだね」

少女の言いたいことが全てわかるとでも言うように男は全てを訳して言葉にする。その光景が、ヒロには少し異常に思えた。
男は、こちらを向き、

「今日越してきたばかりの三波 好世(みなみ こうせい)です。こっちはいちご。八歳。僕の患者だよ」
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