ラヴァーズ・インザ・ダストボックス
花は枯れていく。

綺麗な花もいつかは枯れていくんだ。

知ってる。


けれども、その花は、

精一杯咲いただろう。

力強く咲いただろう。

美しく咲いただろう。

彼女は咲いただろう。


君が空にかざした手は夢に届いて。

僕が君に閉ざした手は故に遠のいて。


そう……、彼女は綺麗に咲いた花なんだ。


僕は彼女が咲いたあの空を見上げることしか出来なくて。

だけど、せめて静かにその花を見ていようと思う。

僕が海の底に着くまでの間、その花を眺めていようと思う。


空が遠くなっていく。

沈んでいく。

何も無い海の底へ。

僕は其処へ。




綺麗だ。


海の中は、綺麗だ。


誰もいないけど、綺麗じゃないか。

光は届かないけど、綺麗じゃないか。


ああ、とても綺麗だよ。


お墓を建てよう。

僕のお墓を建てよう。


綺麗な綺麗な海の底に、小さな小さな僕だけのモニュメント。








『モニュメント』

        終
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