この世界は残酷なほど美しい
その時だった。
世界がスローモーションになったのは。
僕の発言に完全にキレた野中は肩を思い切り掴み、胸ぐらをキツく掴んだ。
そして拳が高く上げられる。
3秒後、僕はきっと横になって倒れていると確信した。
「お前の方が最低じゃねぇか。告白も全部断りやがって。振られた気持ち考えたことあんのかよ」
視線を野中に移すと彼は当然のように眉間に皺を寄せて怒っていた。
だけど僕だって黙っていてはいけないと思う。
癪に障る言葉を言われて「はいはい」と受け流すことなど半人前の僕には出来なかった。
胸ぐらを掴む野中の手を勢いよく離す。
よろめく足取り。
僕は乱れた制服を直して反撃に入った。
右ストレート。
あまり喧嘩は好きではない僕にとっての唯一の攻撃技。
それは見事に野中の頬に食い込んだ。
「きゃあ!」と女子の悲鳴がクラスに響いた。
基本間違いだと思うことはしないようにしている。
それが自分の中のポリシーだった。
だけど野中を殴ったことは間違いだなんてこれっぽっちも思っていない。