引っ込み思案な恋心。-2nd
一晩考えた末……
ようやく私が出した答えは、『拓に本気で走ってもらう』ということだった。
昨日までの放課後練習…、必死な姿で走り込みをする拓をたくさん見てきた。
全ては、リレーで1位になるため。
そんな拓の想いや努力を、こんな賭けで潰すわけにはいかないと思った。
それに…
私も見てみたかったんだ。
1位でゴールして満足そうな笑顔を浮かべる拓の姿を。
その後、私達の関係がどうなっても構わないと思った。
とにかく今日、拓に幸せな思いをしてほしい。
それだけが、今の私の願いだった。
だから私は、昨日の出来事を拓に言わないと決めた。
拓に本気で走ってもらうためには、このことを知られるわけにはいかないんだ。
「柚ーー。こっちこっち!」
「あっ、映美佳」
「あゆの雄姿を見れるように、前の方キープしといたよ〜」
拓と入場門の前で別れた後、自分のクラスの応援テントに入ると、映美佳が私の方を向いて笑顔で手を振っていた。
私はクラスの人波をかき分けながら映美佳の所に向かった。
「ありがとう…」
「徒競争、プログラムの3番目だっけ?あゆと…、他には倉本と瀬川とあかねちゃん…。応援する人が多いよね〜!」
映美佳…
昨日私があんな状態だったのに、何も聞かずに朝からずっとテンションが高いまんま。
間接的に、私を元気づけてくれているのかな…?
この優しさが、私の心に染みた。