引っ込み思案な恋心。-2nd





一晩考えた末……





ようやく私が出した答えは、『拓に本気で走ってもらう』ということだった。






昨日までの放課後練習…、必死な姿で走り込みをする拓をたくさん見てきた。






全ては、リレーで1位になるため。






そんな拓の想いや努力を、こんな賭けで潰すわけにはいかないと思った。






それに…




私も見てみたかったんだ。






1位でゴールして満足そうな笑顔を浮かべる拓の姿を。






その後、私達の関係がどうなっても構わないと思った。






とにかく今日、拓に幸せな思いをしてほしい。






それだけが、今の私の願いだった。






だから私は、昨日の出来事を拓に言わないと決めた。






拓に本気で走ってもらうためには、このことを知られるわけにはいかないんだ。









「柚ーー。こっちこっち!」



「あっ、映美佳」



「あゆの雄姿を見れるように、前の方キープしといたよ〜」






拓と入場門の前で別れた後、自分のクラスの応援テントに入ると、映美佳が私の方を向いて笑顔で手を振っていた。






私はクラスの人波をかき分けながら映美佳の所に向かった。






「ありがとう…」



「徒競争、プログラムの3番目だっけ?あゆと…、他には倉本と瀬川とあかねちゃん…。応援する人が多いよね〜!」






映美佳…





昨日私があんな状態だったのに、何も聞かずに朝からずっとテンションが高いまんま。






間接的に、私を元気づけてくれているのかな…?






この優しさが、私の心に染みた。





< 167 / 270 >

この作品をシェア

pagetop