『霊魔伝』其の壱 木の章
「小早川君。永田さんは君のことを知らないのだから無理はないわ。
 永田さん、小早川君はね、特殊な才能を持っているの。
 それを頼って相談に乗ってもらっているのよ。」
「そうだったの。やっぱり小早川君は普通じゃないのね。」
「普通だよ。普通の高校生さ。」
「でも、私は気にしないからね。彼女になってあげてもいいわよ。」
「ご免なさい。お断りします。」
「うふふ、ホント仲がいいのね。何か漫才を見ているみたい。」
みんなの緊張が少しほぐれた。零次朗が百合に向かってまじめな顔で話し始めた。
「君には信じられないだろうが、俺には他の人には見えないものが見える。
 小さい頃からだ。だから、不思議なことについての勉強をした。
 今ここに小太郎と言う友がいる。
 小太郎は、誰にも見えない。もしかしたら,俺の幻覚なのかも知れない。
 でも、俺にとっては事実なんだ。その小太郎が言うには、この部屋にチャミがいる。
 俺もそれを感じている。今小太郎がチャミと話をしている。」
「それはチャミの幽霊ということなの。」
「イヤ違う。幽霊とは人が作り出したもの。
 本当の姿は、生きていたときのエネルギーが残って、生前の姿を維持しようとしているんだ。
 しかし、物理的な身体は失われているので、普通の目では見えない。
 テレビが電波だけでは見ることができないのと同じ。
 アンテナと受像器が必要なんだ。それを俺は持っている。」
「話もできるの。」
神妙に百合が聞いた。
「ああ、できる。触ることもできる。
 俺にとっては、小太郎も永田さんも同じように見えるし、感じるんだ。
 自分なりに修行めいたこともしたし、本も沢山読んだ。でも、一番の先生は小太郎だ。
 小太郎が教えてくれるんだ。」
「不思議な人ね。何だか小早川君って、私の母性本能をくすぐるのよ。
 だから初めてあったのに、ずうずうしく話しかけたりして。」
「いいんだ。でも、俺と一緒にいると永田さんまで、変に思われるよ、きっと。」
「ホントのこというと、小早川君て私のお兄ちゃんにそっくりなの。
 去年外国へ行ったまま行方不明になってしまって。
 今日小早川君を見たとき、心臓が止まるかと思ったのよ。
 あまりにも似ていて。でも、よく見ると、お兄ちゃんの方がハンサムだな。」
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