『霊魔伝』其の壱 木の章
「なんだって。」
「冗談よ。小早川君も素敵よ。」
 百合は零次朗を見つめた。零次朗は目を反らした。
「意外と純情なのね。」
淳子は微笑んだ。

部屋の片隅でチャミと話をしていた小太郎が、零次朗の隣に戻ってきた。

「零次朗。チャミがすべてを話してくれた。根が深い話だ。》
小太郎が根が深いというときは、因縁とか業が深く、
解決には時間が掛かるかも知れないというときだ。
《チャミは迷い込んできたのではない。自らの因縁と対峙するために、やってきたのだ。》
「それはどういうことだ。」
零次朗が聞くと、小太郎がチャミの話を伝えた。
《実はチャミが生まれてすぐ、親とはぐれた時に、大きな蛇に襲われたことがあった。
その時淳子の両親がまだ若い頃だったが、偶然チャミを助けたのだ。
しかしチャミを助けるために、やむを得ず蛇を傷つけてしまった。
その蛇はその傷が元で死んでしまった。
その蛇の恨みが祟っているのだ。
蛇は霊魔となって、両親に取り憑いた。
だから、子供がいつまでもできなかったのだ。
それを知ったチャミは恩返しのために、蛇の霊魔と戦った。
何とか追い払ったが、自分も生命力を消費してしまった。
そこを両親に再び助けられたのだ。
チャミが生きている間は、蛇の霊魔の力は及ばず、淳子が生まれた。
その直前チャミは寿命がつきたが、淳子だけは守ろうとし、霊魔になった。
だが、両親は間もなく蛇の霊魔のため事故にあって死んでしまった。
幼なじみの友達もそうだ。
チャミが淳子を守っているために、代わりに命を失ってしまったのだ。》
「どうすればいい。今度は淳子に祟ってくるのか。」
零次朗は小太郎の話を聞きながら、淳子と百合を見た。
不安な顔で零次朗を見ている。
もちろん、小太郎の声は聞こえていない。
零次朗の話もハッキリは聞こえないはずだ。
霊魔と話しているときの声は、独特の周波数なので、
普通の人にはぶつぶつと言っているようにしか聞こえないのだ。

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