『霊魔伝』其の壱 木の章
小太郎は話を続けた。

《蛇の霊魔の呪術には周期があるようで、数年ごとにそのピークが来るらしい。
そして今年がそれにあたる。
チャミは長い間呪術を防いできたため、もう力が尽きようとしている。
零次朗、チャミはおまえに淳子を守るように頼んでいる。
呪術を断ち切るには、蛇を供養することと、生け贄がいる。
それが無理なら、蛇の霊魔と戦うしかない。》
零次朗はしばらく考えた上で言った。
「生け贄などできない。蛇の霊魔は強いのか。戦って勝てるなら、戦うしかない。」
《蛇の霊魔は強い。チャミも守りに徹していたから、今日まで淳子を守ることができた。もし戦っていたら、チャミは戦いに敗れて、淳子はこの世にいなかったかも知れない。》
「それでチャミはこの後どれぐらい守れるんだ。」
《時間はあまりない。チャミは一週間が限度だと言っている。》
「わかった。チャミには頑張ってくれと伝えてくれ。
チャミの気持ちは充分伝わってきたよ。」

零次朗は深く深呼吸をした。
そしてそれは、ため息に変わった。
ゆっくりと口を開いた。
「先生、本当のことがわかりました。チャミが話してくれました。しかし、それを今ここでは言えません。少し時間をください。明日もう一度、来ます。」

零次朗は立ち上がると、部屋の隅に向かっていった。
「チャミ、明日もう一度来るから、先生のことを頼むぞ。永田さん、もう帰ろう。そして、今日のことは誰にも言わないように。」
零次朗は、鞄の中から霊符をとりだし、玄関に置いた。そして霊符に呪文を唱えた。

『四縦五横禹為除道蚩尤、避兵令吾周遍天下帰還、故嚮吾者死留吾者亡、急急如律令』
(シジュウゴオウウイジョドウシユウ、ヒヘイレイゴシュウヘンテンカキカン、
 コキョウゴシャシリュウゴシャボウ、キュウキュウニョリツリョウ)

「一応、魔を防ぐお札を置いていきます。先生、今夜は外に出ない方がいいでしょう。何かあったら、電話ください。お札の裏に携帯の番号が書いてあります。明日の朝、学校で。ごちそうさまでした。」

零次朗は礼をすると、外に出た。
百合もあわてて出てきた。
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