『霊魔伝』其の壱 木の章
「先生、ごちそうさまでした。なによ、急に帰るなんて。ちょっと待ってよ。全然わからない。説明してよ。」
「永田さん、君はもう帰ってくれ。これ以上関わると、君にも災いが降りかかるかも知れない。それからこれを持っていてくれ。」
鞄から霊符を出して渡した。
「何か変なことが起きたりしたら、連絡してくれ。
今説明はできないけど、一週間たったらきちんと説明する。」
「小太郎、永田さんを家まで送ってくれ。
その後、国安先生の所に来てくれ。国安先生に相談してみる。」
《わかった。零次朗も気を付けて。》
「何よ、家まで送ってくれないの。夜遅いんだから、襲われたらどうするの。」
百合は零次朗の腕を掴んだ。
「大丈夫だ。小太郎が君を守ってくれる。
俺はこれから行かなくてはならない所がある。
じゃあ、さよなら。」
零次朗は腕を振りきって、足早に歩き出した。
百合は足もとの小石を蹴った。
「もう、小早川君のバカ。いいわよ、帰るわ。
小太郎、いるのアンタ。見えないじゃないの。ちゃんと守ってよ。」

小太郎は笑って、歩き出した百合の後をついていった。

零次朗は一度家に戻った。母の香織は帰ってきた零次朗に、声を掛けた。
「遅かったわね。入学式どうだったの。友達はできたのかしら。」
「ちょっと用事があって、遅くなった。ご飯は食べてきたよ。」
部屋に入り着替えた零次朗は、ベッドの上に人の形に切り抜いた紙を置き、呪文を唱えた。

「布瑠部由良由良止布瑠部、寒言神尊利根陀見。」
(フルベユラユラトフルベ、カンゴンシンソンリコンダケン。)

すると人の形した紙が、零次朗にそっくりな人形になった。
まるで零次朗が寝ているように見える。
頷くと部屋を出て、彩花の部屋のドアをノックした。

「お兄ちゃん、遅かったわね、帰ってくるのが。」


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