『霊魔伝』其の壱 木の章
「零次朗君、これはこの神社に伝わる御神刀で、不動龍王刀と呼ばれるものです。この神社に伝わるある書物に、この不動龍王刀の由来が書かれています。それによれば、天竺つまり今のインドに当たりますが、その天竺の神が日本の神に送った刀で、それが日本刀の原型になったと言うのです。そしてこの刀には、不動明王の炎と龍王の力が秘められており、邪を退けると言われています。」
国安はそう説明をすると、刀身を指でこすった。するとそこに彫刻があることに零次朗は気づいた。

国安は続けた。
「ここに刀身に巻き付くような形で龍が彫られています。この不動龍王刀が本来の力を発揮するときに、この龍が動くと言われています。実は、過去に一度この龍が動いたことがあります。零次朗君も知っているだろうけれど、日本神話のやまたの大蛇、あれがそうなのです。ただし、その時にはこの刀の力を使いこなせずに、龍が大蛇となって暴れたようですね。つまり、力が分散して八つに分かれたのです。本来ならそれがひとつの龍とならなくては行けないのですが。」
零次朗が聞き入っていると、真名瀬が笑いながら言った。
「ははは、零次朗君。剛ちゃんの言っているのは、伝承ですからね。何処までが本当の話かわからないですよ。宮司をやっている私でさえ、信じていないのですから。」
「こら、真名瀬。茶化すなよ。しかし伝承とは言え、この刀を以前調べた時に、わかったことがあるのです。この刀の周囲に特殊な電磁場が生じる事があるのです。その電磁場の中では、わずかなんですが、物質の分子が活性化されるようです。つまり、この刀から発せられた電磁波が周囲の分子を振動させ、熱が発生します。これがもっと強く作用すれば燃焼や爆発といったことも可能かも知れません。また特定の振動数を設定できれば、特定の物質だけを活性化させることもできるでしょう。」
「国安先生、もっとわかりやすく言ってください。」
 零次朗はよくわからなかった。
「つまり、電子レンジと同じなのです。電子レンジは電磁波によって水の分子を激しく振動させて、温度を上昇させます。これは、水だけに目標を絞っているのですが、もっと強く激しくすれば、水は一瞬で蒸発してしまいます。そこまですれば水蒸気爆発ですね。」
「そんなことができるんですか。」
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