『霊魔伝』其の壱 木の章
零次朗は呪文を唱え、不動龍王刀を封印石に向かって投げた。刀は封印石の真ん中に当たったかと思うと、封印石の中に吸い込まれた。そして封印石が光り始め、夜だというのに昼間のように明るくなった。次第に明るさが収まると、封印石の真ん中に亀裂が入りふたつに割れた。割れた中から、光り輝く不動龍王刀が飛び出し、零次朗の胸に突き刺さった。不動龍王刀は次第に零次朗の体の中に沈んでいくように消えていき、零次朗は倒れた。
小太郎が駈け寄り、零次朗に声を掛けた。
《零次朗しっかりしろ。封印は解け、契約は無事にすんだ。》
国安も駈け寄って零次朗を抱き起こした。
「零次朗君、しっかりしたまえ。」
「大丈夫だ、息はしっかりしているし、顔色も悪くない。気を失っているだけだ。社務所に運んで休ませよう。」

真名瀬も傍でため息をついた。今目の前で起きたことが、現実なのか夢なのか判断できなかった。社務所に運ばれた零次朗は、朝まで目を覚まさなかった。小太郎はずっと零次朗についていた。
《零次朗、目が覚めたか。》
「小太郎、おはよう。今何時かな。あれ、ここは何処だ。俺の部屋じゃないぞ。」
《何も覚えていないのか。気を失ってここに運ばれたんだ。》
「気を失ったって。ちょっと待てよ。そうか。思い出した。霊魔の封印を解いたんだ。 けど、その霊魔は何処にいる。」
《零次朗。おまえは霊魔と契約をした。胸を見てみろ。》
小太郎に言われ、シャツをめくった。すると右胸に炎のような赤い痣があった。
「どうしたんだ。こんな痣は今まではなかったのに。」
《それが契約の証。霊魔はおまえの中に息づいている。》
「俺の中に。こんな事って有るのか。」
《霊魔にはいろいろなタイプがある。俺は独立して存在できるが、零次朗の中にいる霊魔は、 依存型で人や物と一体となるタイプだ。》
「どう付き合えばいいのだ。」
《俺と同じだ。まず、名前を決めなくては。そうすれば答えてくれる。》
「名前か。おい、俺の中の霊魔よ。返事をしてくれ。おまえに名前を付けたいけど、どんな奴かわからないと付けようがない。」
零次朗の右胸の痣がうずいた。すると零次朗の頭の中に声が響いた
< 26 / 49 >

この作品をシェア

pagetop