『霊魔伝』其の壱 木の章
そういえば今日から弁当を持ってくることになっていた。きっと零次朗の母も弁当を用意してくれていたに違いない。持ってくるのを忘れた。差し出された弁当を見ると、自分の腹が減っていることに気がついた。
「あ、ありがとう。」
「今日の小早川君、素直じゃない。食べ物の力には勝てないのね。はい、どうぞ。」
弁当を受け取ると、日当たりの良い場所に座った。百合もハンカチを出すと地面に広げて座った。
「ねぇ、さっき真剣な顔で読んでいたものは何。塩原先生と関係あることなの。」
「いやちがうよ。この学校にまつわる幽霊の話。」
零次朗は弁当を食べながら言った。
「学校の怪談ね。一時流行ったわよね。そういえば、この学校にも有名な怪談があったわね。えっと、たしか夜誰もいないはずなのに、ぼうっと明かりが灯って、人影が見えるって。何でも以前行方不明になった生徒が、さまよっているという噂が広まったわ。その生徒の担任が、責任を感じて学校を辞めたけど、夜になると生徒を探しにきているという別の噂もあったわ。」
「その行方不明になった生徒の名前は知っているかい。」
「いいえ、知らないわ。小学校に入るかどうかの頃よ。でも、新聞には名前が出たんじゃないかな。」
「そう。新聞か。ごちそうさま。思ったより美味かった。」
零次朗は空になった弁当箱を片づけた。
「食べるのがはやいわね。また明日も作るね。」
「いいよ。俺たち別に付き合っているわけでもないし。母さんも弁当作ってくれるし。今日は持ってくるのを忘れたけど。」
「何を言っているのよ。二人は深い仲でしょう。小太郎のことも知っているし。ね、小太郎。」
「小太郎は今いないよ。ちょっと出かけている。」
「あら、そうなの。」
「あまり誤解を招くことするなよな。後で後悔するよ。お互いに。」
百合は半分ほどしか食べていない弁当を片づけ、零次朗の食べた弁当といっしょに袋にしまった。そして立ち上がると言った。
「ねぇ、さっき何処に行こうとしていたの。それに塩原先生が心配していたから、あいさつに言ったほうがいいわよ。じゃあね。」
突然百合は階段に向かって歩き出した。
「ごちそうさま。」
零次朗は百合の後ろ姿に声を掛けた。
百合は振り向かないで手を振った。
「さて、時間がないから急ごう。」
「あ、ありがとう。」
「今日の小早川君、素直じゃない。食べ物の力には勝てないのね。はい、どうぞ。」
弁当を受け取ると、日当たりの良い場所に座った。百合もハンカチを出すと地面に広げて座った。
「ねぇ、さっき真剣な顔で読んでいたものは何。塩原先生と関係あることなの。」
「いやちがうよ。この学校にまつわる幽霊の話。」
零次朗は弁当を食べながら言った。
「学校の怪談ね。一時流行ったわよね。そういえば、この学校にも有名な怪談があったわね。えっと、たしか夜誰もいないはずなのに、ぼうっと明かりが灯って、人影が見えるって。何でも以前行方不明になった生徒が、さまよっているという噂が広まったわ。その生徒の担任が、責任を感じて学校を辞めたけど、夜になると生徒を探しにきているという別の噂もあったわ。」
「その行方不明になった生徒の名前は知っているかい。」
「いいえ、知らないわ。小学校に入るかどうかの頃よ。でも、新聞には名前が出たんじゃないかな。」
「そう。新聞か。ごちそうさま。思ったより美味かった。」
零次朗は空になった弁当箱を片づけた。
「食べるのがはやいわね。また明日も作るね。」
「いいよ。俺たち別に付き合っているわけでもないし。母さんも弁当作ってくれるし。今日は持ってくるのを忘れたけど。」
「何を言っているのよ。二人は深い仲でしょう。小太郎のことも知っているし。ね、小太郎。」
「小太郎は今いないよ。ちょっと出かけている。」
「あら、そうなの。」
「あまり誤解を招くことするなよな。後で後悔するよ。お互いに。」
百合は半分ほどしか食べていない弁当を片づけ、零次朗の食べた弁当といっしょに袋にしまった。そして立ち上がると言った。
「ねぇ、さっき何処に行こうとしていたの。それに塩原先生が心配していたから、あいさつに言ったほうがいいわよ。じゃあね。」
突然百合は階段に向かって歩き出した。
「ごちそうさま。」
零次朗は百合の後ろ姿に声を掛けた。
百合は振り向かないで手を振った。
「さて、時間がないから急ごう。」