『霊魔伝』其の壱 木の章
「どうして階段から落ちたのですか。」
「零次朗君とお昼をいっしょに屋上で食べて、教室に戻るとき不注意で足を滑らせたと言っていたわ。」
「そうですか。先生はこれからどうするんですか。」
「私は永田さんのお母さんがもう少しで来られると思うから、それまではいます。」
「先生、少し話がしたい。ちょっと何処か話のできる所ありませんか。」
淳子は少し考えた後言った。
「そうね、永田さんも落ち着いて眠っていることだし。じゃあ、屋上へ行きましょうか。」
二人は病室を出ると、エレベーターで屋上へ向かった。屋上は洗濯物が干せるようになっており、誰でも出られるようになっていた。
「小早川君、話って何。」
「先生、田嶋理恵子という名に心当たりありませんか。」
「田嶋理恵子。知らないわね。その子がどうしたの。」
「先生の友だちの里見恭子さんの妹さんなんです。」
「えっ、恭子の妹の理恵子ちゃん。そういえば、恭子は妹に会いたいけど会えないと言っていたわ。あまり詳しく話してくれなかったけど、複雑な家庭事情だったみたい。」
「両親が離婚して、名字が変わったみたいなんです。」
「そういえば、お父さんが別人みたいになったという話は、恭子から聞いたことがあるわ。それが原因だったのかしら。」
「そうです。離婚した後、恭子さんのお母さんは、妹の理恵子さんを連れて行方がわからなくなっていたみたいです。」
零次朗は小太郎が聞き出した話と、その後の推測を淳子に話した。普通なら信じがたい話であるが、淳子は戸惑いながらも頷いた。
「そうなの。私にはよくわからない次元の話だけれど、小早川君が言うことだから信じるわ。でも、今回の永田さんの怪我が、関係あるというのはどうかな。話が飛びすぎない。」
「いいえ、先生に関わる人には霊魔の災いが降りかかることは、おおいに考えられます。特に永田さんは、先生の家まで行って話を聞いてますから。」
「じゃあ、永田さんは今も狙われているの。」
「ええ。でもこれからは、小太郎が見守りますから。」
「小早川君は大丈夫なの。」
「俺は大丈夫です。それより、霊魔の居所を早く探さないと駄目です。たぶん、先生に縁のある場所ではないかなと思うんですけど。」
「そうね。以前両親と住んでいた家があって、もうそこには別の人が住んでいると思うけど。」

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