『霊魔伝』其の壱 木の章
「それは、あの猫のチャミが迷い込んできた家ですか。」
「ええ。でも両親が事故にあってから、そこには住んでいないけど。伯母の家に引き取られたから。」
「そこは何処ですか。」
零次朗の問いかけに淳子は場所を教えた。
緑が多い住宅地として発展した評判の良い住所だった。
「これから行って来ます。少しでも早く手がかりを掴まないと。」
「気を付けて。あまり無理はしないで。」
「永田さんのこと宜しくお願いします。」
「ええ。何かわかったら連絡してね。」
二人は病室の戻ると、百合はまだ眠っているようだった。零次朗は小太郎を呼んだ。
「小太郎、彼女を頼んだぞ。俺はこれから、霊魔の居所を探りに行って来る。」
《わかった。零次朗、注意しろ。霊魔の気が永田百合の周りに少し残っている。
接触してきたのは確かだ。無理するな。何かあれば、式神を飛ばせ。》
零次朗が病室を出るのと入れ違いに、百合の母親らしい女性が病室に入った。それを振り返りながらエレベータへ向かった。病院を出ると来たときと同じように、バスを乗り継いで行った。最寄りのバス停で降りると、日が暮れかけて暗くなり始めていた。街路樹が多く緑の住宅地という評判通りの町並みだった。
少し歩くとその家は見つかった。前に小さな公園があり、子供たちが遊んでいた。家の表札を見ると、外されていた。雨戸も閉まっており、誰も住んでいないようだった。零次朗は精神を集中して、周囲の気配を探った。家の中からは、どんよりと澱んだ気が漂ってきた。
しかし、それよりも邪悪な感じのする気が公園から流れてきている。そちらに目を向けると、公園の奥に茂みがあり、そこから邪悪な気が来るようだった。零次朗は公園に入り、その茂みをのぞき込んだ。するとそこには、マンホールのようなフタがあり、そのフタの隙間から厭な感じが漂ってきていた。

その時突然声を掛けられた。
「何やっているの、お兄ちゃん。」

振り返ると、彩花が立っていた。
横には彩花と同じ制服を着た女の子が立っていた。

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