『霊魔伝』其の壱 木の章
そのために蛇の怨念は、一家に近い田嶋理恵子の一家に取り憑いた。彼女は塩原先生の親友里見恭子の家族であることがわかり、蛇の怨念の強さがわかった。彼女たちの母親は、近くに住む大学生によって殺害されてしまった。きっと蛇の怨念がさせたことであろうと想像できる。塩原先生を守っていた猫の力が尽きようとしており、蛇の力が塩原先生に及ぶ寸前である。関わった永田百合は怪我をしてしまった。

早急に蛇の霊魔を捜し出さなければならない。例の家の前で、胸がうずいたのはそこに何かがあるからだ。零次朗はこっそりと家を出た。

国安は自宅に戻ると、零次朗からの留守電を聞いた。
「早急に零次朗君に会わねば。」
携帯電話を取り出し、零次朗へ掛けた。

例の幽霊屋敷へ向かう途中、携帯が鳴った。
「もしもし、あっ国安先生。」
『零次朗君、至急会いたいのだが、どこにいますか。』
「今、例の家に向かっているところです。」
『今すぐ、私の家に来てくれないか。大変な事実が分かった。
 それを伝えたいのだが、電話では話せないんだ。』
「わかりました。すぐに行きます。」
零次朗は途中で引き返し、国安の屋敷に向かった。国安の声の感じからすると、相当重要な事であることが想像できた。
「零次朗君、来てくれましたか。」
屋敷の玄関前で国安が待っていた。
「何か重要なことがわかったのですか。」
「はい、今回の事件の根幹に関わる重要な事実が分かりました。中に入りましょう。あたたかい紅茶でも入れます。」
ふと、零次朗はこの屋敷が、近所では幽霊屋敷と呼ばれていることに因縁を感じた。例の家も幽霊屋敷と呼ばれているのだ。書斎に行くと、既に紅茶が用意されていた。使用人である小柄な老人が零次朗の到着を察知して持ってきてくれたのだろう。四月にしては今夜は冷える。寒いと言うより冷気を感じる。
「零次朗君、これを見てください。」
差し出された写真と新聞の切り抜き、そして何かのデータ表を受け取った。
< 37 / 49 >

この作品をシェア

pagetop