『霊魔伝』其の壱 木の章
この公園に集まった霊気が、零次朗にも影響を与え始めているのか、感覚が敏感になっているようだった。普段では離れた小太郎と会話ができないのが、今はできるようになっている。
《聞こえるぞ、零次朗。》
「小太郎、ここには身体が震えるくらい霊気が集まっている。この状況はヤバイ。何とか邪気のない霊魔だけでも、ここから取り除かなくては。」
《俺が話をする。多分霊魔を集めている奴がいて、そいつが何かを企んでいるんだ。邪悪な気が強くなっている。気をつけろ。》
「早く来てくれ。」
《あと五分だ。》
突然地面が揺れた。地鳴りのような音が響く。地震とは違う揺れだ。

「零次朗君、避難しよう。」
国安が走ってきた。見ると関口たちが倒れている。
「大丈夫ですか、先生。何があったんですか。」
「突然、全身が痺れたような感覚があり、気が付いたらみんな倒れていました。
おそらく地磁気に誘導された電流が放電したのでしょう。幸い私は、測定装置のアースを持っていたので、影響が少なかったようです。」
「関口さんたちは大丈夫ですか。救急車を呼ばないと。」
「一時的にショックを受けて気を失っているだけでしょう。一旦退いて対策を考えないとまずいことになります。」
「でも、このままにしておけません。俺、貯水槽を見てきます。きっと原因があるはずです。」
「零次朗君、それは無茶です。」
「無茶は承知です。でも、俺の中の何かが、そうしろといっているのです。急がないと取り返しの付かないことになるような気がします。」
零次朗は国安が止めるのも聞かず、走り出した。貯水槽への入り口は関口が倒れている先にあった。関口たちの様子を横目で見ながら、駆け込んだ。調査のためにドアのカギは開けられていた。中に入ると押し戻されそうな程の圧力を感じた。

霊気が詰まっている。
気を強くして進んだ。

階段を降りていくと、小さな部屋があり、調査で入り込んでいた関口の助手が倒れていた。
「大丈夫ですか。」
零次朗は抱え起こして声を掛けたが、反応はなかった。息をしてはいるが、意識がなかった。
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